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- 授業実践DVDを活用して授業改善を図ろう(2)
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~中学校で増えた授業時数の活用のヒントに 授業の工夫改善と小中・中高連携など各授業の視聴ポイントとともに~
中学校版:文部科学省 教科調査官 平木裕氏
今回の学習指導要領の改訂により、各学年とも授業時数が週3コマ相当から4コマ相当へと増加し、年間では105時間から140時間へと35時間増えました。増えた時間をどう授業改善に活用するかについては、中学校の指導内容はほとんど変更されていないので、何を改善すべきなのかという質問もよくいただきました。しかし、中学校の位置付けや役割は変わってきています。小学校で外国語活動が導入され、高等学校でも授業は英語で行うことを基本とするという規定が設けられたことで、外国語教育に大きな変革が起きつつあるからです。中学校に関しては、小学校や高等学校との接続などの視点から従来の指導の在り方の見直しを求められていることを踏まえ、具体的な授業の工夫改善の参考にしていただきたいと思っています。
今回のDVDのねらいは、まず単元全体の構成を考える上で参考にしてもらうことです。各単元の「層」を従来よりも厚くしましょう、と私はよく言っています。単発的に何か特別なことをするのではなく、単元の展開の仕方において充実を図っていく、そのためにこのDVDを映像資料として参考としていただきたいです。
Q. DVDに登場する学校をどのような観点で選んだのでしょうか?
A. 現在、外国語教育に求められている、あるいは課題となっていることを踏まえて、次の4つのポイントを最初に設定し、実践がすすんでいる学校をピックアップしました。
①小中連携を踏まえた、外国語活動との接続を意識した授業
(新潟県妙高市立妙高中学校第1学年と静岡県浜松市立南部中学校第2学年で収録し、学年の違いによる接続のさせ方のバリエーションを示しています)
②中高連携を踏まえた、高校生との交流授業
③単元を通した「書くこと」の指導
④ICTを活用した発信型の授業Q. 今回のDVDは、平成22年度に続く2度目ですが、前回と異なるポイントはどういったところですか?
A. 前回は、学習指導要領改訂の趣旨に照らし、基本的な授業の進め方として参考となるよう、次の点に重点を置きました。
・ALTとのTTの在り方(TTにおけるALTとの役割分担)
・JTEとしての英語の使い方
・「書くこと」における4技能の統合的な活用の工夫
・「話すこと」における活用を通して定着を図る工夫
・「読むこと」における学習形態を工夫した指導それぞれの授業での言語活動に焦点を当て、その進め方において参考にしてもらいたい点を強調するとともに、実施上の留意点についても適宜コメントを入れています。
それに対して今回は、改訂の大きなポイントである「授業時数増」への具体的な対応の仕方という視点から授業改善を図る上で参考となる切り口を設けました。たとえば、どのようなコンセプトで単元全体を構想し、それに基づいて各時間の授業をどう位置付けるか、について具体例を示しています。また、各授業の見どころや特徴などを映像と音声で解説するとともに、それぞれの授業の学習指導案を添えることで、どういったところを参考にしてもらいたいかについて前回以上に充実した資料となりました。
Q. DVDに収録されている各学校の授業で、特に見てもらいたいポイントはどういったところですか?
A. 新潟県妙高市立妙高中学校では、チャンツやリズム、簡単なゲームを用いた指導方法を取り入れています。小学校での外国語活動を中学校でどう生かせばいいのか、という質問をよく受けますが、これを見れば、校区内の小学校と連携することでいろいろな工夫ができることがわかると思います。
静岡県浜松市立南部中学校の授業は、自分の考えを英語で表現する活動をたくさん設けています。子どもたちが自分の知っている表現で、あるいは表現の持ち合わせがなければクラスメートと相談したり先生に教えてもらったりしながら、どう表現するかを考える機会をしっかり与えています。
青森県むつ市立田名部中学校では、近隣の田名部高等学校との連携により高校生が参加する授業を収録しています。子どもたちが担任の教師やALTとは別の、自分の目標となる身近なモデルを目の当たりにするとモチベーションを高めるきっかけになるということを感じてもらえればと思います。
埼玉大学教育学部附属中学校のICTを使った授業で注目してもらいたいのは、発表だけではなく、そこに至るまでの練習がいかに地道に、時間をかけて行なわれているか、ということです。子どもたちは、先生の指導によって徐々に自信をつけていき、それが発表となって表れています。
佐賀県鹿島市立東部中学校の授業では、書く力をつけるために、他の技能をいかに活用し、統合的な活動を行っているかを見てもらいたいと思います。また、ALTの助けを借りることにより、生徒にとって書く目的が明確で実際的なものになっているのもポイントです。
Q. 今回のDVDをどのように活用してもらいたいとお考えですか?
A. 平成22年度版と今回のDVDはそれぞれコンセプトが異なるので、例えば研修会でDVDを使う際、どちらが適切かは研修のねらいによります。平成22年度版は細かい指導技術が関わってくる一方で、今回は単元全体をどう構想するかをポイントにしており、趣旨に合わせて活用してもらえればと思います。
Q. 今回は、指導案と活用のポイントが文部科学省のウェブサイトに掲載されていますが、これらとDVDを合わせて効果的に活用する方法を教えてください。
A. 学習指導案を掲載したのは、単元全体を通して授業者がねらっていることを意識しながら、収録された授業を見てもらいたかったからです。例えば、次のような見方が考えられます。
・単元全体の目標や評価規準に照らし、本時の授業はどのような位置付けで計画され、実際に指導がなされているか
・「指導観」などで示されている指導上の工夫が、実際に授業の中でどのように現れているかこうした見方を通して、学習指導案の持つ意味や指導案を作成する上での基本的な考え方、単元全体の指導や評価をどう構想するかについて話し合ってもらいたいと思います。
Q. 今回は、校種間連携にも焦点を当てた授業が収録されていますが、自分の勤務する学校種以外のDVDを活用する方法についてアドバイスをお願いします。
A. 小中連携や中高連携が必要なのは分かっているが、簡単には自分の学校から出られない、という現場の声をあちこちで聞きます。もちろん、他校種の学校に足を運んで授業を見たり子どもの様子を把握したりすることが大切ですが、実際にはそれが難しい状況にある学校もあると思います。そういった場合には、DVDを使って他校種の様子を見てもらいたいと思っています。中高の先生が一同に会することばかりが中高連携ではなく、中学校の先生だけでも、高校との連携を図る研修ができます。各学校や地域の実態に合った方法を工夫しながら、小学校や高等学校との連携を進めていく必要があると考えています。
(2012年10月掲載)